「いつまでツイッターを見てる気?」
「うーん。やる気が出るまでかな?」
「ツイッターを見てるとやる気が出るの?」
「ツイッターを見ててもやる気はでないんだなぁ。これが。」
「じゃぁ、なんでツイッターを見てるの?」
「一番手軽にできるから。」
「なにかを始めるにはエネルギーがいるもんね?」
「机に向かって文章を書き始めるのにどれほどのエネルギーが必要か知ってる?」
「30キロカロリーくらい?」
「そんなちゃちなもんじゃないよ」
「じゃぁ、どれくらい?」
「ビッグバン3回分くらいだよっ!」
その瞬間私は宇宙が3回生まれ、2回滅びる感覚を思い出した。昨日の深夜0時10分にも感じていたあの感覚。感性の爆発、情動の暴発。脳のシナプスに電流が走り、古びた回路は爆ぜ跳び、赤や黄色や青の炎となって、生命の暗黒迷宮へ消えていった。迷宮ではミノタウロスを始めとする異形の怪物たちが跋扈し、世界表層でぬくぬくと暮らしている人間たちを脅かそうとあらん限りの力で唸り声をあげている。私の指がその唸り声を感じ取り、青い画面上に文字列として転写していく。これは世界創世の神話である。今この瞬間、私は世界を創造しているのだ!見よ!この美しく広大な大草原を!
「残念だけど、世界創造は失敗みたいね?」
「「美しく」、「広大」な大草原。なんとも陳腐な形容詞をくっつけたものだと、反省しているよ。」
「三島由紀夫だったかしら。「美しい女を描写するのは簡単だ。」みたいなことをどこかで書いていた気がする。」
「『文章読本』だったかな。とりあえず今日の創作は失敗だね。」
「今日も?」
私は何も言わずにベッドへ倒れこんだ。決して寝心地が良いとは言えないベッドは私の心も体も癒してくれない。しかし、睡眠は私を癒してくれるだろう。朝がやってくる。私は労働へ向かうだろう。私は疲れ切った身体と精神を引きずって橋を渡り、家へ戻ってくるだろう。月を見ながら。私は、少量の野菜と果物を食べるだろう。シャワーを浴び、顔に科学物質を塗り込むだろう。湯を沸かし、コーヒーを淹れるだろう。机の前に座り、パソコンを開くだろう。そしてまた文章を書くのだ。